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現代の翻訳・ローカライズ作業に不可欠な存在となっているCATツール(コンピューター支援翻訳ツール)。その機能やメリット、選び方、使う際の注意点などをまとめました。
1950年代から開発が始まったCATツールは、ここ20〜30年間で大きな発展を遂げ、現在では人間が行う翻訳作業に欠かせない存在となっています。当初は1台のパソコンで使うスタンドアロン型のソフトウェアでしたが、やがて企業内ネットワークでクライアントサーバー型のツールとして利用されるようになりました。現在ではクラウド型のCATツールが登場。いつでもどこからでも、ブラウザさえあれば利用できるツールへと進化しました。
CATツールとは?
CATツールとは、ある言語から別の言語へのテキストの翻訳を支援するソフトウェアのことです。日本語では「コンピューター翻訳支援ツール」または単に「翻訳支援ツール」とも呼ばれます。翻訳したい文書を読み込んで効率的に翻訳作業ができ、データの保存や活用にも便利なツールです。国・地域や文化を越えてビジネスを展開する多くの企業が、CATツールを利用して、グローバル戦略の一環として翻訳プロジェクトを効果的に進めています。
CAT=コンピューター支援翻訳
CATはComputer Assisted Translationの略で、「コンピューターが支援する翻訳」を意味します。つまり、人間の翻訳者が、書かれた文章をある言語から別の言語へと翻訳する際に、その作業をコンピューターのソフトウェアで支援することを指します。
CATツールの目的
CATツールは、翻訳に関連する作業をできるだけ自動化・効率化することを目的として設計されたソフトウェアです。
翻訳者がCATツールに原文のテキストを読み込ませると、ツールがその文書を自動的にセグメント(文、フレーズ、パラグラフごとのひとかたまりの単位)に分割します。そして、翻訳者が翻訳を行うと、原文とそれに対応する訳文を、セグメント単位で「翻訳メモリ」と呼ばれるデータベースに保存します。このデータを以降の翻訳時に参照して、作業の効率化を図ります。
つまり、翻訳するコンテンツが多くなればなるほど、データベースが充実し、再利用できる訳文データの数が増えていきます。このような自動化・効率化により、翻訳プロセスを大幅にスピードアップでき、過去の翻訳との一貫性も保ちやすくなります。
コンピューター支援翻訳(CAT)と機械翻訳(MT)の違いとは?
機械翻訳(MT:Machine Translation)とは、人間が介入することなく、人工知能(AI)などを使って機械的に翻訳を行うプロセスのことです。一方、コンピューター支援翻訳(CAT:Computer Assisted Translation)は、人間が行う翻訳を機械が支援するプロセスを指します。つまり、主として翻訳を行うのが、機械であるか、人間であるかという点で、これら2つは全く異なるプロセスです。
近年、機械翻訳エンジンは劇的な進歩を遂げ、多くのCATツールや翻訳管理システム(TMS)とともに用いられるようになりました。ただ、品質が上がったとはいえ、信頼が求められるビジネスで使用するには、まだ正確性の面で課題があり、文脈や歴史を考慮した翻訳、ニュアンスの微調整、原文の間違いに気づく感覚など、人間に及ばない面も多くあります。
そこで、人間によるポストエディット(後編集)を行って、正確さや流暢さを担保する方法がとられるようになっています。つまり、機械翻訳エンジンとCATツールを組み合わせることで、翻訳作業を効率化しつつ、正確かつ高品質な結果を提供しようとしています。
CATツールの使用の流れ
CATツールは、翻訳者がより速く、より効率的に作業を行えるように設計されたソフトウェアです。CATツールは、読み込まれた文書を小さなセグメントに分割し、翻訳後は、原文と訳文をペアにしてデータベースに保存していきます。加えて、オートサジェストやスペルチェックなど、翻訳者の作業をサポートするさまざまな編集・品質保証機能も備わっています。CATツールは一般的に次のような流れで使用されます。
- 翻訳者が翻訳したい文書をCATツールに読み込ませる
- CATツールが、その文書から画像など翻訳不可能な要素を除外して、翻訳可能な部分のみを抽出する
- CATツールがテキストを翻訳単位(文、フレーズ、段落など)に分割する。この翻訳単位をセグメントと呼ぶ
- CATツールのエディタ上に、原文フィールドと訳文フィールドが1セグメントずつ並んで表示される
- 翻訳者は、空の訳文フィールドに順に翻訳文を入力していく
- 翻訳者が翻訳を確定させると、CATツールは、セグメント単位で原文と訳文をペアにして翻訳メモリに保存する(翻訳者はいつでもこの翻訳メモリのデータを変更・更新可能)
- 以降の翻訳作業では、同一または類似の原文セグメントが翻訳メモリ内から見つかると、対応する訳文がエディタ画面に自動的に表示されるようになる
CATツールの機能とは?
CATツールとは、一般的なテキストエディタに、翻訳用の機能を追加したもの、と考えるとわかりやすいかもしれません。現在、多くのCATツールが市場に出ており、詳細な機能はそれぞれ異なりますが、以下のような中核的機能は共通してみられます。
翻訳メモリ
翻訳メモリ(TM:Translation Memory)とは、過去に行った翻訳を、原文と訳文をペアにする形で記録したデータベースです。大量の翻訳データをメモリに保存しておくことで、新たな翻訳プロジェクトを行う際に、翻訳メモリ内で同一(完全一致)または類似(あいまい一致)のセグメントを自動的に抽出して、訳文を再利用できるようになります。とくに繰り返しや定型表現が多い技術文書、法律文書などの翻訳において、翻訳メモリは大きな力を発揮します。一度行った翻訳のデータは即座に保存されるため、同じ作業を繰り返す手間がなく、時間の節約と一貫性の向上に役立ちます。
用語ベース(用語集)
用語ベース(TB:Term Base)は、用語集とも呼ばれ、専門用語や固有名詞など、特定の用語の訳語を定義して保存しておくデータベースです。具体的な使用例などの補足情報も合わせて保存できます。特定の分野や企業・組織向けの翻訳プロジェクトに役立つ辞書のような機能です。用語の正確性、一貫性を確保でき、内容を充実させていくことで、より効率的に翻訳できるようになります。
共同作業に役立つ機能
クラウド型のCATツールでは、翻訳者や校正者、翻訳プロジェクトマネージャ、顧客、他のチームのメンバーなどをプロジェクトに招待し、共同作業や、文章のスタイルなどについての意見交換をリアルタイムで行えます。また、タスクをメンバーに割り当てるなどの業務管理にも役立ちます。
品質保証機能
ワープロソフトのスペルチェックのように、CATツールにも翻訳作業中のミスを防止する、品質保証(QA)機能が備わっています。この機能により、用語ベースで指定された訳語との不一致や、タグの欠落、数値の食い違いなどを検出でき、翻訳の質を維持できます。
機械翻訳
機械翻訳を使えば、従来の人手翻訳では不可能だった大量のテキストの翻訳を瞬時に行えるようになります。ただ、現状では品質が完全ではないため、人間が機械翻訳の出力をポストエディット(後編集)することで、スピードと質の確保の両立を目指す方法がとられるケースが多くなっています。
CATツールのメリットとは?
CATツールは、翻訳編集から品質保証、用語やスタイルの統一まで、さまざまな作業に対応できるツールです。具体的には、以下のような点でプロセスの改善を図れます。
一貫性の確保
CATツールに搭載されている翻訳メモリや用語集を活用することで、複数の文書を翻訳する際にも、一貫したスタイルや用語を適用できます。CATツールを使えば使うほど、翻訳メモリにデータが蓄積されていき、一から翻訳が必要な文章は次第に少なくなっていくメリットもあります。
生産性の向上
CATツールを使えば、翻訳作業の前に文章を抜き出して、特定の形式にコピー&ペーストする、といった手作業の必要がありません。翻訳後も、元の形式のまま原文を訳文に置き換えたファイルを自動的に生成できます。入力作業やフォーマット変換を行う時間を省け、必要な翻訳作業のみに集中できます。
柔軟性の確保
クラウド型のCATツールでは、チームメンバー、共同制作者、クライアントなどを翻訳プロジェクトに招待して、リアルタイムで柔軟に共同作業できます。ウェブ、デスクトップ、モバイルなど、さまざまなプラットフォームに対応しているCATツールなら、オフィスでもリモートでも移動中でも、好きなデバイスで作業を行えます。
翻訳品質の向上
技術文書、金融関係など、とくに業界特有の専門用語を含む翻訳を頻繁に行う場合は、用語やスタイルの統一が重要です。翻訳メモリや用語ベースといったデータベースを活用することで、一貫性のある高い品質を保ちながら、より迅速に翻訳を行えます。
コストの低減
CATツールのテクノロジーにより、翻訳者は同じような翻訳を何度も繰り返す必要なく、一貫した品質を維持しながら、迅速かつ効率的に作業を行えます。翻訳プロセスにかかる手間や時間を削減でき、最終的なコストの抑制につながります。
CATツールを利用する際の注意点とは?
すでに広く使われているCATツールには、大きなデメリットと呼べるものは見当たりませんが、以下のようなポイントについて留意しておく必要があるでしょう。
セグメント分割時のエラー
翻訳文を自動的にセグメントに分けてくれる機能は便利ですが、機械による判断のため、本来の意図とは違う箇所で分割されてしまうケースがあります(例えば、固有名詞に「!」マークが含まれていると、文の終わりだと誤認識されてしまうなど)。そのため、あらかじめ目視でチェックしたり、エラーを見つけた際にはCATツール上で手動で統合・分割したりするなど、適切な翻訳単位になるよう注意する必要があります。翻訳メモリにもセグメント単位でデータが保存されるため、利用価値の高いデータベースを構築する上でも重要なポイントです。
文書の全体像の確認
対訳形式のエディタ表示では、原文と訳文の対応がわかりやすい一方、最終的な文書の流れや仕上がりをイメージしにくいことがあります。そのため、多くのCATツールに備わっているプレビュー機能を使って、随時仕上がりのイメージを確認し、位置や文脈に応じた表現や言葉が使われているか、適切な文のつながりになっているかをチェックすることが、最終的な質の向上につながります。
翻訳メモリや用語ベースのメンテナンス
翻訳メモリや用語ベースは非常に便利なデータベースですが、いったんミスが紛れ込んでしまうと、それが繰り返し使用されてしまうリスクがあります。初回の訳文を決定訳としてしまうことで、以降のブラッシュアップの機会が失われる可能性もあります。また、1つの原文に対して、複数バージョンの訳文が登録されてしまい、どれを採用すれば良いのかわからない事態に陥るケースも考えられます。そのため、定期的にデータベースを更新し、ブラッシュアップの機会を確保していくことが、質の維持・向上に役立ちます。
クラウド型かデスクトップ型か、どちらのCATツールを使うべき?
CATツールには、大きく分けてデスクトップ(ローカル)型とクラウド型の2種類があります。デスクトップ型は、パソコンにソフトウェアをインストールして使うタイプです。インターネット接続がなくても作業できるため、通信状態・速度の影響を受けないメリットがあります。
一方、クラウド型はインターネット接続さえあれば、場所や使用デバイスを問わず、ブラウザを使って作業できるメリットがあります。頻繁に作業場所が変わるリモートワークやハイブリッドワークに対応しやすく、スマホやタブレットといったモバイルデバイスでの作業にも便利です。常に最新のデータにアクセスできるため、ソフトウェアのアップデートなどの手間もありません。外部の翻訳者との共同作業など、部門や会社を越えたコラボレーションにも対応しやすくなっています。
グローバルビジネスにおいて、CATツールが重要な理由とは?
CATツールは、グローバル展開を目指す企業が、多言語化業務を最適化できるソリューションのひとつです。適切なCATツールの使用は、新しい市場に進出して、世界中の多くの顧客に自社の存在をアピールする力になります。その取り組みが、最終的に市場シェア、収益、競争力の向上につながっていきます。
最適なCATツールの見つけ方
現在、さまざまな種類のCATツールが登場しています。ニーズに合ったCATツールを見つけるには、まず以下のような観点から、自社にとって何が重要かを考えることが大切です。
予算を決める
CATツールは種類によって価格帯もさまざまです。初期投資の額だけでなく、作業時間をどれだけ節約できるか、翻訳の一貫性や品質をどれだけ向上できるかといった、長期的な費用対効果を検討することが重要です。
ニーズを明確にする
どのCATツールを採用するかを決める前に、自社のニーズを把握し、どのような結果を望むのかを明確にしておく必要があります。そのためには、実際にツールを使う担当者に、どのような機能があれば便利か尋ねることも役立つでしょう。
連携機能を確認する
適切な連携機能が備わるCATツールを選ぶことで、作業間のギャップをなくし、全体的な業務プロセスを最適化できます。多くのCATツールには、eコマースや会計ソフト、コンテンツ管理システムやストレージなど、さまざまな外部ツールとの連携機能が用意されています。自社のワークフローにシームレスに統合できるCATツールを見つけることが重要です。
試しに使ってみる
正式に導入を決める前に、複数のCATツールを実際に使ってみて、どれが最も自社に適しているかを検討するとよいでしょう。とくに使用したい機能があれば、実際に作業を行う人が実務に即した形で使ってみることで、最終的な判断に役立つ情報が得られます。
将来を見据えたCATツールの選択を
変化の激しい時代において、数年後に自社がどのような規模や体制で、どのようなシステムを使って業務を行っているかを予測することが難しくなっています。そのため、CATツールを選択する際にも、自社のニーズの変化に合わせて拡張可能であること、さまざまな最新ツールとの連携にいち早く対応できることなどを確認しておく必要があるでしょう。
また、ツールを提供する会社のサポート体制はどうか、有用な教育コンテンツやアップデートを提供してくれるかどうかをチェックしておくことも重要です。適切なツールの選択により、多くの企業が変化にいち早く対応し、スムーズかつ効果的に海外ビジネスを展開して、新たな可能性が広がっていくことを期待します。