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翻訳テクノロジーの進化とビジネスへの影響、そしてニーズに合ったテクノロジーベンダーを選定する方法について、ご紹介します。
翻訳テクノロジーの登場から50年以上が経った現在、相互接続が進む世界において、翻訳テクノロジーはこれまで以上に不可欠なものになっています。
Nimdzi Insightsによる最近のレポートによると、現在、700を超える言語テクノロジーソリューションが存在しているといいます。多様なサービスが登場する中、自社のビジネスニーズに最適な翻訳ツールをどのように見つければよいのでしょうか?
その最初のステップは、翻訳テクノロジーとは何か、それをどう活用できるのかを、しっかりと理解することです。それでは詳しく見ていきましょう。
翻訳テクノロジーとは?
翻訳テクノロジーとは、ソフトウェアツールにより、ある言語から別の言語への文章の変換を支援する技術のことです。一般的なテクノロジーと同じく、翻訳テクノロジーも生産性や精度、全体的な効果の向上に貢献します。
「翻訳テクノロジー」という用語には、翻訳メモリ、用語管理ツール、機械翻訳(MT)、バーチャル通訳テクノロジー、音声からテキストへの変換テクノロジーなど、さまざまな要素が含まれます。
翻訳テクノロジーの登場以前、翻訳者は紙の辞書を使って、自ら最適な言葉を判断し、手作業で翻訳していました。
その方法では、以下に挙げる理由から、ビジネスへのマイナスの影響がありました。
- 市場投入までに時間がかかる
- コンテンツ全体で一貫性を保ちづらい
- 非効率的な作業により、コストがかかる
- 人間の目でチェックするため、ミスを見逃す可能性がある
翻訳テクノロジーの誕生が、この状況を一変させました。過去の翻訳データを保存して以降のプロジェクトに生かす翻訳メモリや、翻訳管理システムなどのツールにより、反復的なプロセスが自動化され、プロジェクトの管理も容易になりました。
翻訳テクノロジーはビジネスにどう役立つ?
ビジネスに翻訳技術ツールを導入することで、現在、以下のことが可能になっています。
- スペルや文法の誤りをチェックして翻訳品質を確保できる
- 過去の翻訳データを保存して、以降のプロジェクトで参照・再利用することで、コンテンツ全体の一貫性を高められる
- 翻訳管理タスクの自動化により、業務効率が向上する
- より多くのコンテンツを短時間で制作できるようになり、市場投入がスピーディーになる
では、各種翻訳テクノロジーの詳細を説明する前に、翻訳テクノロジーの進化の歴史をたどってみましょう。
翻訳テクノロジーの歴史
現代の翻訳テクノロジーの一部は、キンディーというアラビア人の学者が9世紀に考案した頻度分析に起源があります。
ただ、そこから翻訳テクノロジーが真に形になり始めるのは、コンピューターが手頃な価格で利用できるようになる20世紀半ばまで待たねばなりませんでした。
以下に、翻訳テクノロジーの進化を大まかにまとめます。
- 1950年代:ジョージタウン大学とIBMが世界初の機械翻訳(MT)システムを世に出しました。これはルールベースと辞書学的なアプローチ、つまり、事前にプログラムされた規則と辞書を用いて翻訳する仕組みでした。この初期の機械翻訳は信頼性が高いとは言えず、処理速度も速くありませんでしたが、それでも革命的であり、さらに高度なテクノロジーへの足がかりとなりました。
- 1970年代:米国国防高等研究計画局(DARPA)が、音声認識技術の開発に乗り出しました。これによって、音声からテキストへの変換技術の道が開かれました。
- 1980年代:電子辞書と用語データベースの登場が、大きなターニングポイントとなりました。これらのツールにより、翻訳者は用語に対応する訳語をすぐに見つけられるようになりました。
- 1980年代半ば:ランチェスター科学技術大学(現コヴェントリー大学)の「ALPシステム」が登場し、現在の翻訳管理システム(TMS)の先駆けとなりました。
- 1980年代後半〜1990年代初頭:IBMの研究者が統計的機械翻訳(SMT)を開発しました。これは大規模な対訳データ(バイリンガルコーパス)から統計モデルを学習する、単語ベースのシステムでした。例えば、ドイツ語の「das auto」という語が、「the car」「the vehicle」「the automobile」という英語にそれぞれどれだけの頻度で翻訳されているかを分析し、最も頻度の高い訳語を採用する仕組みです。
- 1990年代初頭:この頃に、商用のコンピューター支援翻訳ツール(CAT)の多くが開発され、翻訳テクノロジーの革新における節目の時代となりました。これらの技術により、より効率的・効果的に作業を行える新しい世代の翻訳者が生まれました。
- 1990年代後半:IBMから統計的翻訳エンジンの新バージョンがリリースされました。このシステムでは、従来の単語ベースではなくフレーズベースの仕組みが採用されました。これは、Googleが2006年にニューラル機械翻訳(NMT)テクノロジーを発表するまで、商用システムの業界標準となりました。
- 2000年代初頭:初のクラウドベースのTMSソリューションが市場に送り出されました。これにより翻訳作業の柔軟性が増し、場所や部門を問わず、チームで共同作業できるようになりました。
- 2006年:Googleが「Google翻訳」を発表し、世界に衝撃を与えました。当時は統計的翻訳を採用していたこのシステムは、入力されたテキストをいったん英語に翻訳してから、各言語へと翻訳します。過去に学習した単語やフレーズに基づいて、次に来る単語を予測するアルゴリズムが用いられましたが、しばしば文法的な正確さを欠く結果となりました。
- 2016年:Google翻訳にニューラル機械翻訳(NMT)が導入され、フレーズベースのCATツールに代わる新たな業界標準になりました。
グローバル化する世界で、翻訳テクノロジーが重要である理由
変化が激しく、これまで以上にネットワーク化された世界において、人々はできる限りユーザーフレンドリーで利用しやすい、スムーズな体験を求めています。自らの文化やニーズに合った、質の高い製品やサービスも求められています。
ブランドから発せられるメッセージや外観、印象を、対象となる地域や文化に適応させるプロセスを、ローカライゼーションと呼びます。製品パッケージ、ウェブサイトのデザイン、ビジネス戦略など、さまざまな取り組みがローカライゼーションの対象になります。ローカライゼーションの成功の鍵を握るのは、いかに対象地域の文化を考慮してブランドメッセージを翻訳できるかです。
情報が重視される現代のビジネスでは、さまざまなタイプのコンテンツを、複数の言語で、多様なオーディエンスに届ける必要があります。翻訳テクノロジーを活用することで、企業はこの課題に対処できるだけでなく、コスト削減と品質・速度の向上を同時に実現して、翻訳への投資効果を最大化できます。
コストと生産性に目配りしながら、グローバル化に伴う期待や要求に応えなければならない現代の意思決定者は、翻訳テクノロジーを活用することで、あらゆる面で成果を上げられるでしょう。
翻訳テクノロジーにより、ローカライゼーションプロセス全体を合理化でき、迅速、容易、安価にグローバル化を実現できます。また、拡張可能で効率的なソリューションを活用することで、企業はこれまで以上に、スピーディかつ効果的に新しい市場に参入できるようになるでしょう。
翻訳テクノロジーの主な種類
翻訳テクノロジーは絶えず進化を続け、現在でも毎年のように新たなイノベーションが生まれています。以下に、広く使われている主要な翻訳テクノロジーをご紹介します。
コンピューター支援翻訳(CAT)ツール
翻訳者の日々の業務をサポートするソフトウェアが、CATツールです。CATツールは、過去の翻訳データ(特定の言語ペアの対訳データ)、頻度情報、セグメンテーションデータなどの豊富なリソースにより、翻訳作業を支援します。
通常、CATツールでは、原文と訳文に2分割された作業画面が表示されます。各文章は文や段落単位のかたまり(セグメント)に分けられ、翻訳者は全体の流れを追いながら、セグメントごとに作業できます。
CATツールには、次のような機能があります。
- 翻訳者が過去の翻訳を再利用できる「翻訳メモリ」
- ブランドやプロジェクトごとに特有の用語を検索できる「用語ベース」や「用語集」
- 他の翻訳者やプロジェクトマネージャーらが提供した画像やコメントなど、文脈の把握に役立つ資料の共有
- 高度な検索ツールやナビゲーションツール
- 翻訳作業の進捗を詳細に伝えるレポート
- 過去の翻訳と完全一致する場合に、セグメントごとに自動で訳文が入力される「オートコンプリート」機能
- 未翻訳のセグメント、数値の欠落、表記の揺れなどの翻訳エラーを発見する品質保証ツール
- 元の文書と同じ形式の翻訳済み文書を自動的に生成する機能
- ニューラル機械翻訳エンジンなど、他の翻訳テクノロジーと連携する機能
翻訳テクノロジーに革命をもたらしたCATツールにより、企業は簡単に翻訳プロセスを最適化し、大量のコンテンツを効率的に処理できるようになりました。これは時間とコストの両方の節約につながります。また、翻訳者にとっては、反復的なタスクにかかる時間を省いて、翻訳作業自体に集中できるというメリットがあります。
さらに、CATツールは需要に合わせて拡張・縮小しやすく、カスタマイズも可能であるため、コンテンツやオーディエンスごとのニーズに応じた翻訳プロセスの合理化にも役立ちます。
機械翻訳(MT)
機械翻訳(MT)は、人間が介入することなく、自動的に翻訳コンテンツを作成するシステムです。前述したように、機械翻訳自体は新しい概念ではありませんが、近年のテクノロジーの進歩により、機械翻訳が利用される場面が増加しています。機械翻訳は、完全に自動的に翻訳を生成するという点で、人間の作業を前提としたCATツールとは異なります。
機械翻訳の種類
機械翻訳エンジンは、以下の3つのカテゴリーに分類されます。
- ルールベース機械翻訳(RBMT):一連のルールに基づいて単語や文を翻訳します。ルールはユーザーが調整できます。
- 統計的機械翻訳(SMT):コーパス(大量の対訳データ)から学習された統計モデルによって翻訳を行います。
- ニューラル機械翻訳(NMT):AIを用いて、人間の脳の言語処理を模倣した仕組みで翻訳を行います。つまり、一単語ずつ翻訳するのではなく、機械学習により文全体、段落全体を丸ごと解釈します。
2016年までの機械翻訳システムは統計的アプローチを採用していましたが、現在、ほとんどの機械翻訳エンジンはニューラル型になっています。
機械翻訳そのままか、機械翻訳のポストエディットか
機械翻訳の出力品質は、次のような要因によって差が出てきます。
- 言語ペア:英語と中国語など構文が異なる言語は、スペイン語とフランス語など文法が類似している言語に比べて、正確な翻訳が難しい場合があります。
- 使用分野:例えば、法律関係の文書は、一般的な文書よりも正確性が求められる傾向があります。
- 事前編集の有無:翻訳エンジンが苦戦しがちな要因を、原文からあらかじめ排除しているかどうかも、翻訳品質に影響します。
- プロジェクトの範囲と、エンジンの学習に利用できるデータの量。
- 翻訳出力の向上のために、人間の編集者や翻訳者が手を入れるかどうか。
- プロバイダー:与えるデータの量によって、発揮する性能が異なるエンジンもあります。
上記からもわかるように、目標とニーズに応じて、機械翻訳を編集せずにそのまま使うか、人間の翻訳者に出力翻訳を改善してもらうかという2つの選択肢があります。後者は、機械翻訳ポストエディット(MTPE)と呼ばれ、大きく「ライト」と「フル」のMTPEに分けられます。
覚えておくべきなのは、機械翻訳をそのまま使う場合には、高度な学習機能とAIテクノロジーを搭載した最先端のMTエンジンを使用する必要があることです。
最新のテクノロジーにより、機械翻訳の出力品質を評価できるようにもなっています。これは機械翻訳品質推定(MTQE)と呼ばれ、これによりポストエディットのリソースを最も必要とされる領域に集中できます。
また、ポストエディットでは、文書の種類によって必要となる編集のレベルが異なってきます。例えば、ウェブサイトのFAQページは簡単(ライト)な編集で済むかもしれませんが、ブランドの評判に直結するプレスリリースなどは、完全(フル)なポストエディットが必要になるでしょう。
一方、財務諸表など機密性の高いコンテンツは、常に人間の翻訳者が扱う必要があります。機械翻訳とポストエディットのどちらが適しているかを判断する大まかな目安は次のとおりです。
- 与える影響が少なく、使用期間の短い、曖昧さのないコンテンツには、機械翻訳をそのまま使用できるでしょう。例えば、社内文書や、製品レビュー(読者がそれほど高い品質を期待しないもの)などのユーザー生成コンテンツ、顧客からの問い合わせ、機能の更新情報といった頻繁に変更されるコンテンツなどが、これに当てはまるでしょう。
- 不正確な情報が公開されるとブランド価値が損なわれてしまう場合は、ライトまたはフルのMTPEを採用すると良いでしょう。例えば、固有名詞や多義語が含まれる製品の名称や説明、ナレッジベース、プレスリリースなどです。
- 最高レベルの品質が求められ、金銭的、時間的な制約をクリアできる場合は、人間の翻訳者に任せましょう。正確さや一貫性を重視する法務、財務、技術文書や、ユーザーの行動に直結するクリエイティブ性の高いコンテンツなどが考えられます。
最新のCATツールの多くは機械翻訳に対応しているため、用語集、用語ベース、翻訳メモリ、ブランドブック、スタイルガイドといったCATツールの機能で、ポストエディターの作業を支援できます。MTPEを活用することで、文化や言語の垣根を超えて、ブランドボイスやキーメッセージの一貫性を保ちやすくなるでしょう。
翻訳管理システム(TMS)
翻訳管理システム(TMS)は、大規模な翻訳プロジェクトを管理するために開発されたソフトウェアプラットフォームです。
最初のリクエストからプロジェクトの完了までのワークフローを設定することで、翻訳プロセス全体を合理化でき、翻訳プロジェクトの計画、作業割り当て、管理が容易になります。
クラウドベース型とオンサイト型など、ユーザーのニーズに応じたさまざまなTMSソリューションが登場していますが、多くのシステムに共通して見られるのは、次のような機能です。
- 複数の言語とファイル形式のサポート
- プロジェクトの状況を表示し、1か所で主要ツールにアクセスできる「ダッシュボード」
- 翻訳するコンテンツをTMSに自動的にインポートし、プロジェクト完了後に自動的にエクスポートする機能
- ユーザーの追加や他システムからの既存の翻訳リクエストのインポートにより、サードパーティプロバイダーとの共同作業を容易にして、プロセスを合理化する機能
- プロジェクトの任意の時点で、タスクの割り当て、変更、解放ができる機能
- 全プロジェクトの進捗状況の概要がわかるレポート機能
- プロジェクト管理者、翻訳者などの役割を設定するユーザーロール管理
- 効果的な共同作業とプロジェクトの所要時間短縮に貢献するリアルタイムコラボレーション
- 用語集、用語ベース、翻訳メモリなどのCATツール
- 翻訳プロセスのスピードアップに役立つ機械翻訳
- 既存システムやコンテンツ管理システム(CMS)、UI設計ツール、バージョン管理システムといった他のツールと容易に連携するための、統合機能やアプリケーションプログラミングインターフェイス(API)
優れたTMSソリューションには、独自のワークフローを作成し、プロジェクト、部門、チームごとのニーズに応じてソフトウェアをカスタマイズできる、十分な柔軟性が備わっています。また、拡張性の高いシステムを使えば、自社のビジネスの成長に合わせたスケールアップが可能です。
適切な翻訳テクノロジーベンダーを選ぶには?
多種多様な翻訳ソフトウェアが登場する中、企業は自社に合ったソリューションを選択しなければなりません。では、自社に適した翻訳テクノロジーを、どのように選べばよいのでしょうか?
機能とツールが揃っているだけでは十分ではありません。拡張性があり、既存のシステムと柔軟に統合できるサービスである必要があります。また、直感的に操作できることも重要なポイントです。
翻訳テクノロジーの提案依頼書(RFP)を作成すれば、必要な機能やメリットが明確になり、数あるサービスの中で、どれが自社の要件をすべて満たすのかを判断しやすくなります。
提案依頼書を作成する前に、以下のポイントを検討しましょう。
- 他のクライアントとの実績が示されているサービスであるか
- 自社のビジネスに最適な機能の選定や、ツールを使うことによるワークフローへの影響、プロセスの改善方法などについて、プロバイダーがアドバイスをしてくれるかどうか
- サービスが、自社が必要としている要素をすべてカバーしているかどうか(例えば、既存システムとの統合が必須である場合など)、将来のビジネスニーズに対応できる柔軟性を備えているかどうか
- 自分たちはどのようなサポートを求めているのか。必要に応じて、プロバイダーがトレーニングセッションやトラブルシューティングなどのサポートを提供してくれるかどうか
- オンプレミス型、クラウド型のどちらのソリューションが必要か
- サービスが、AIを用いた最先端の機械翻訳に対応しているか
- フリーランサーがリモートで作業するために、あらゆる場所から、あらゆるOS(Linux、Mac、Windows)で使用できるツールであるか
翻訳テクノロジーの未来
機械学習のおかげで、翻訳ツールは数十年前よりも、はるかに精度が高くなっています。人工知能が進歩し続けるにつれて、翻訳テクノロジーは、ますます強力になるでしょう。
ただ、人間による翻訳と機械翻訳には、それぞれ利点があります。例えば、人間は既存の枠にとらわれない創造的な思考を得意とし、AIは反復的なタスクの自動化に適しています。そのため、今後も翻訳が完全に自動化されることはなく、人間と機械が相互に補完し合っていくでしょう。
未来の翻訳は、人間の知性とAIベースの機械翻訳の組み合わせにより、最良の結果を生み出すと、専門家も指摘しています。つまり、人間の翻訳者とAIツールがそれぞれの役割を果たしながら、1つの翻訳チームとして連携することで、優れた成果をあげられるでしょう。全体としては「コンピューターが支援する人力翻訳」から「人間が支援するコンピューター翻訳」へと移行していくと考えられます。
機械翻訳のポストエディットでは、AIがより正確で流暢な翻訳を生成するようになり、人間の翻訳者はオーディエンスごとに最適な表現になるよう、最終的なクリエイティブの調整を担うようになるでしょう。
未来は明るいようです。翻訳テクノロジーにより、翻訳者は反復的で面倒なタスクはAIに任せ、より複雑で創造的な作業に集中できるようになります。
今や翻訳テクノロジーを使うかどうかが問題ではありません。どれを選ぶか?が問題なのです。
以下の記事でも、翻訳テクノロジーについて詳しく解説しています。ぜひ、ご一読ください。